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加瀬怜羅くんの話。
ああ、また騙された。
私はLINEの画面を見てため息をついた。みんなで仲直りしよう、と笑顔で言っていた彩芽ちゃん。友達になった証に、みんなでLINEグループを作ろうという話になり、私もそれに誘われたのだ。私は嬉しかった。やっと彩芽ちゃんも、私と仲良くしてくれるつもりになったのだと思ったのだ。
実際、入った直後のLINEグループは賑わっていた。彩芽ちゃんとその友人数人で楽しそうに雑談しており、招かれた私のことも喜んで受け入れてくれたように見えていたのだ。
しかし、朝起きて見ればその場所は完全に沈黙している。
当たり前だ。――“四年三組仲良しグループ”と表題されたグループのリストには、私の名前しか表示されていない。彩芽ちゃんを含め、他の人たちが全員抜けてしまったからだ。私一人を残して。私にだけ、何も言わずに。
――また、騙された。
似たようなことは過去にも何回もあった。彩芽ちゃんのいい加減な性格なんて今更だ。きっと私に連絡をするのを忘れてしまったのだろう。もしくは、昨日の会話で似たような話が出ていたのを私が聞きそびれてしまっただけかもしれない。
そう、きっと何かのミス。そう思い込みたい。でも。
――間抜けだな、私は。
騙された、と思ってしまう。本当の友達になろうね、なんて言葉に何回引っかかれば気が済むんだろう。じわり、と涙が滲みそうになる。駄目だ、今日も学校があるから泣いている場合じゃないというのに。
「美優紀ー?遅刻するわよ、早く起きてらっしゃーい」
ドアの向こうからお母さんの声がする。私は慌てて目元をごしごしとパジャマの袖で拭った。こんな顔をしていては心配されてしまう。それに相談したところで、アナログ派のお母さんはきっとLINEグループのどうこう、なんて真剣に受け取ってはくれない。
傷つかないように、気にしないように。言い聞かせて、私は今日も息を吸い込む。
「……ごめん、今起きるから!」
吐き出した声は、微かに震えていた。
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