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一方的に、スタンから電話を切られて。
僕は手にした携帯を見つめながら、とりとめもなく色々なことを考えていた。
あの時は、本気で云ってくれてたはずなんだ。
スタンは僕とフライフィッシングに、本気で行ってくれるつもりだった。それは、絶対に確かだ。
だからきっと、あの後で、スタンの気持ちを変えさせるようなことが。
――何かあったんだ。
ああ、でも。
休暇の約束をした後、食事をしてから。スタンは、何だか変だった。違う?
僕がガードナー巡査部長が聞きつけたっていう、スタンに纏わる噂について、つい口を滑らしたあの時。
スタンは、こっちがぞっとさせられるほど気分を害してた。
それでもスタンは、すぐに。
僕には怒ってないって、そう云って笑ったのに。
「釣りは連れて行ってやるから心配するな」って。そう云って僕の髪を撫でてくれたよ?
なのに、なぜ?
でも、そんなこといくら考えても、所詮はスタンの口から、直接聴いたことではないから。
そんなことに意味なんて無い……考えたって仕方ない。
そして僕は、ひとつ首を横に振って任務へと戻った。
そんな風にして、スタンからの最後の電話があって。
そしてそれが、スタンとの最後の会話になってしまってから、ほんの数日後のことだ。
――スタンレイ・ハンセン夫人が、ニーナ・ハンセンが、死んだと知ったのは。
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