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じゃあ、問題の実技について。
スタンのフィットネスの授業はというと、まあ……「きつくはなかった」といえば嘘になるかな。
でもそれは、フォームや筋力トレーニングの仕方など、カデット一人一人への目配りが、きちんと感じられるものだった。
「トレーニング・ジャンキー」っていうのは、どこの世界にもいるものだ。
けど、スタンは「フィットネス・トレーニングによる体の故障」を何より嫌がった。
いやそれ以上かな。「軽蔑していた」と云ってもいいのかもしれない。
要するに、スタンの講義や授業は、基本的にはどれも「クレバー」なものだった。
でも、特にフィットネスの授業でだけど――「これってカデットをどれだけ『しんどくさせるか』が目的なのでは?」って感じるようなイベントが、一定のタイミングで必ずあった。
僕はシニア・ハイで、バスケットチームのレギュラーメンバーだったし、体力には自信があって、年齢だって同期の中では最も若いグループだった。
中には、二十代後半、どうかすると三十代なんて人もザラにいたしね。
にもかかわらず、僕はスタンのフィットネスの授業の後、疲労のあまり吐いてしまったことがあった。それも一度や二度のことじゃない。
いつだったか……。
アスレティックコースのタイムトライアルの後、スタンが僕の後ろを通りがかってこう呟いた。
「ミシェル訓練生、警官が追う相手が全員、オリンピック級の中長距離タイムの所持者たどいうわけではない」
実はその時、僕にはスタンが何を云っているのか、よく分からなかった。
でもこの疑問は、後でちゃんと解決したんだけどね。
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