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13 じゃあ、問題の実技について。 スタンのフィットネスの授業はというと、まあ……「きつくはなかった」といえば嘘になるかな。 でもそれは、フォームや筋力トレーニングの仕方など、カデット一人一人への目配りが、きちんと感じられるものだった。 「トレーニング・ジャンキー」っていうのは、どこの世界にもいるものだ。 けど、スタンは「フィットネス・トレーニングによる体の故障」を何より嫌がった。 いやそれ以上かな。「軽蔑していた」と云ってもいいのかもしれない。 要するに、スタンの講義や授業は、基本的にはどれも「クレバー」なものだった。 でも、特にフィットネスの授業でだけど――「これってカデットをどれだけ『しんどくさせるか』が目的なのでは?」って感じるようなイベントが、一定のタイミングで必ずあった。 僕はシニア・ハイで、バスケットチームのレギュラーメンバーだったし、体力には自信があって、年齢だって同期の中では最も若いグループだった。 中には、二十代後半、どうかすると三十代なんて人もザラにいたしね。 にもかかわらず、僕はスタンのフィットネスの授業の後、疲労のあまり吐いてしまったことがあった。それも一度や二度のことじゃない。 いつだったか……。 アスレティックコースのタイムトライアルの後、スタンが僕の後ろを通りがかってこう呟いた。 「ミシェル訓練生、警官が追う相手が全員、オリンピック級の中長距離タイムの所持者たどいうわけではない」 実はその時、僕にはスタンが何を云っているのか、よく分からなかった。 でもこの疑問は、後でちゃんと解決したんだけどね。
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