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14   リーバーマンは、ほとんど駆け出しそうな勢いで廊下を歩いていく。 一刻も早く、スタンの部屋から遠ざかりたい一心なんだろう。 僕やレスも、つられて早足になった。 そして、僕らは教官たちのオフィスがある建物から外へと飛び出す。 リーバーマンが、盛大な溜息をついて云った。 「レス! お前……なんだって、事を面倒な方に面倒な方に向けちまうんだよ、このバカ!」 「じゃあ、お前らは悔しくないのかよ? あんなこと云われて!『ストーン・コールド』のヤツ……俺たちの命や任務を『カネ』と比べやがって!」 「お前のおかげで俺やジャックが、どれだけ肝を冷やしたと思ってるんだ?!」 リーバーマンが、めずらく声を荒くする。いかつい顔をした大柄な男なんだけど、普段はひどく温和なヤツなのに。 「俺はあいつにビビったりしないぜ」 軽い興奮状態のまま、レスがリーバーマンに言い返す。そして僕を振り向くと、 「ジャック=バティスト、お前もリーバーマンと同じか? なあ、ブロンディ(ブロンドちゃん)?」と突っかかってくる。 もちろん、僕はレスの挑発に乗る気なんか全然なかった。だから、 「……レスの云いたいことも分からないじゃないけどさ」と。 なるべくゆっくりと言った。 「ただ、ハンセン教官は……ごく合理的なだけなのかもね」 「合理的だって?! ヤツが?」 レスは吐き捨てるように云う。 そして、リーバーマンはといえば、見るからに疲れ果てていてた。 きっと内心は「こんな話もうどうだっていい」と思っているに違いない。 なのに、とりあえずはその場に佇んで、じっと僕たちの話を聞いてくれていた。ホント、いいヤツなんだよ。 僕はレスに向かって続けた。 「それにさ、『死んだってお金にすればたかが知れている』ってことは、死が割に合わない、つまり『僕たちの命の方がずっと大事だ』っていってるようにも聞こえるよね」 レスは軽く舌打ちをした。そして何も言い返さず、そのまま立ち去っていった。 僕とリーバーマンは、レスの背中が遠ざかっていくのを、少しの間、ぼんやりと眺めるともなく眺めていた。 レスのシャツの背は、ぐっしょりと冷汗で濡れていた。 僕とリーバーマンは、互いに軽く手を上げて挨拶をし、それぞれの(バラック)へと戻っていった。 いつもだったら、ジムで軽くトレーニングした後、シャワーを浴びているような時間だった。 でも今さら、ジムでひと汗かくような気力なんて、さすがに残っていなかった。
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