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16 ――配属早々、忙しいだろうな。 警察学校(アカデミー)修了の日のスタンの言葉は、まさに「カッサンドラの予言」だった。 トロントでは、本当に「配属早々」から忙しかった。 僕が実務(オン・デューティー)研修(・トレーニング)で配属されたのは、空港だ。 とにかくシフトはきつかった。 僕の着任に先立って、すでに「今期の首席が配属になる」っていう前評判が立っていたらしくてさ。そのせいで、風当たりも厳しかったのかもしれない。 空港ってところには、本当にまいるよ。   誰からだって声をかけられる。何から何まであらゆることを尋ねらるんだ。 ウォッシュルームの場所とか、フェデックスの差出窓口とか。    「訊かれたことを、いちいち答えなくていい。その疑問が空港の『どこに行けば解決するか』だけ覚えておけ」 警官になって初めての僕の「相棒」。退職間近のベテラン警官からのアドバイスが、これだった。 まさに、空港勤務で最も役に立った助言だったね。   じきに、僕はトロントの別の支部に移った。 そこでは新たにペーパーワークに忙殺されることになった。
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