20

1/3

90人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

20

20 それで、スタンとの電話が終わった後に、僕が何をしたかってさ。 ほんと……バカみたいなんだ。 僕は部屋を片付け始めた。 テーブルの上を整理して、シンクを拭いて。 キッチンとリビングの床にダスターをかけた。 「明日の日中は家にいろ」だって?! いったい「日中」って何時くらいだよ。 そんなの「いつ来るか」全然分かんないじゃないか? スタンのバカ! そんなことをぶつぶつ言いながら、僕はリビングに置きっぱなしてあった洋服やらなにやらを、とりあえずベッドルームに持っていく。 服はクローゼットに突っ込んで、ガラクタは作りつけの棚の上に押し込んだ。 施設でもそうだったし、寮でもそうだったけど。 僕は誰かと共同生活をしている時は、自分のスペースというものを、相当きちんと整頓することができた。 「得意だった」と言ってもいいくらいだ。 だけどさ。 こと、自分の部屋に関しては、つまり「完全なプライベート」ってものを手に入れてしまうと、そういうのが、まったくもって面倒になってしまうんだ。 アナとリックの家に居た時もそうだった。 自分の部屋は、ヒドかったよ。 もちろん、皆がいるところを散らかすことはなかったけどね。 ふたりは、僕の部屋については「プライバシー」として見てくれたから、散らかってようがどうだろうが何も言わなかったな。 そう。 「散らかすことができる」っていうのが、「嬉しかった」っていうのもあるんだ。 だって、誰のことも気にしなくていい「僕だけの場所」ってことだから。 きれいに「しなきゃいけない」ってことがない。 それってすごい開放感だ。 ここに住み始めて、さすがに、キッチンやバスルームを汚したままにすることはなかったけど。 ことベッドルームに関してはね、僕はなかなかの傍若無人ぶりだった。 そうやって、家を片付け始めた僕ではあったけど。 ベッドルームだけは、そうしようって気にはならなかったんだ。だってさ。 ここには、スタンを入れたりしないんだから。 絶対に―― そうさ? 家に来たいなら来ればいい。  でも、この部屋には―― ベッドルームには、絶対に入れさせないから。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加