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それから、スタンはすぐに、僕のものも同じように慰めてくれた。
とは云っても、その時にはペニスはもう限界で、スタンの指が軽く触れた瞬間に達してしまいそうなほどだった。
咥えられてすぐ、激しく射精した。
僕たちは、そのまま裸でリビングルームの床に転った。
呼びたいように呼べ――
ただし「スタンリー」以外だ。
そんなスタンの言葉が、不意に僕の脳裏によみがえった。
「……なぜ?」
この問いかけに反応して、額に手を当てて目を閉じていたスタンが、僕に視線を向けた。
「どうして、『スタンリー』は駄目なの? 奥さんはそう呼んでたよ……だからなの?」
「そもそも俺の名前は『スタンレイ』だ。何度説明してもニーナには、分かないようだが」
スタンは口の端を僅かに歪めて見せる。
そう、スタンレイ=ストーン・コールドお得意の、とても皮肉な表情。
そして、スタンは脱ぎ捨てられたブルーサージに手を伸ばすと、煙草とライターを取り出した。
「不思議な、甘い香りがする」
僕が言うと、スタンが少し怪訝そうな顔をした。
「それ、タバコが。フィットネスの教官なのにそんなの吸っててさ……スタン、走れるの?」
スタンは煙を吐き出すと、あっさりとこう言う。
「走り回らなきゃならんのは、俺じゃなくてカデットの方だ」
そりゃ、そうなんだけどさ。
僕はちょっとだけ腑に落ちない気持ちになる。
スタンがシャワーを浴びに起き上がった。
一糸まとわぬ、スタンの後ろ姿。
僕はそこから目が離せない。
本当に、なんて。
なんて綺麗な背中、ヒップ。
それに、長い長い脚。
すると、突然にスタンが振り返った。
あんまりにバツが悪くて、僕の耳が熱くなる。
でもスタンは、相変わらずそんなことお構いなしみたいに、いつもの涼しげな表情でこう言った。
「それから……これはタバコじゃなくて、シガーだ」
そして、また微かに皮肉な笑みを浮かべて、こう云い足す。
「正確に言うと」
溜息のように、ひといき笑い声を洩らすと、僕も床から立ち上がる。
散らばった服を拾って身につけた。
ひどくお腹がすいた気がしてた。
スタンはこれから仕事なんだし。
また「ろくに喰ってなくて空腹だ」なんて言わせたくない。
何か食べさせておかなくちゃ。
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