22

1/3

90人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

22

22 それから、スタンはすぐに、僕のものも同じように慰めてくれた。 とは云っても、その時にはペニスはもう限界で、スタンの指が軽く触れた瞬間に達してしまいそうなほどだった。 咥えられてすぐ、激しく射精した。 僕たちは、そのまま裸でリビングルームの床に転った。 呼びたいように呼べ―― ただし「スタンリー」以外だ。 そんなスタンの言葉が、不意に僕の脳裏によみがえった。 「……なぜ?」 この問いかけに反応して、額に手を当てて目を閉じていたスタンが、僕に視線を向けた。 「どうして、『スタンリー』は駄目なの? 奥さんはそう呼んでたよ……だからなの?」 「そもそも俺の名前は『スタンレイ』だ。何度説明してもニーナには、分かないようだが」 スタンは口の端を僅かに歪めて見せる。 そう、スタンレイ=ストーン・コールドお得意の、とても皮肉な表情。 そして、スタンは脱ぎ捨てられたブルーサージに手を伸ばすと、煙草とライターを取り出した。 「不思議な、甘い香りがする」 僕が言うと、スタンが少し怪訝そうな顔をした。 「それ、タバコが。フィットネスの教官なのにそんなの吸っててさ……スタン、走れるの?」 スタンは煙を吐き出すと、あっさりとこう言う。 「走り回らなきゃならんのは、俺じゃなくてカデットの方だ」 そりゃ、そうなんだけどさ。 僕はちょっとだけ腑に落ちない気持ちになる。 スタンがシャワーを浴びに起き上がった。 一糸まとわぬ、スタンの後ろ姿。 僕はそこから目が離せない。 本当に、なんて。 なんて綺麗な背中、ヒップ。 それに、長い長い脚。 すると、突然にスタンが振り返った。 あんまりにバツが悪くて、僕の耳が熱くなる。 でもスタンは、相変わらずそんなことお構いなしみたいに、いつもの涼しげな表情でこう言った。 「それから……これはタバコじゃなくて、シガーだ」 そして、また微かに皮肉な笑みを浮かべて、こう云い足す。 「正確に言うと」 溜息のように、ひといき笑い声を洩らすと、僕も床から立ち上がる。 散らばった服を拾って身につけた。 ひどくお腹がすいた気がしてた。 スタンはこれから仕事なんだし。 また「ろくに喰ってなくて空腹だ」なんて言わせたくない。 何か食べさせておかなくちゃ。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加