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スタンからの連絡が、しばらく途絶えていた。
もちろん気になってたさ。すごく。
でも僕は、自分からはスタンに連絡を取らないことにしていた。
なんだろう、意地かな?
「この関係」は「スタンの方から始めたんだ」って、自分に云い聞かせたかったのかもしれない。
「奥さんを裏切ってるのはスタンの方なんだから」って。
いや違う。
もし――
もし僕の方からスタンに連絡を取ってしまったら、もう本当に、取り返しが付かなくなる気がしたんだ。
スタンに追いすがって溺れて。
――僕のすべてを引き替えにするほどに。
そしてそんな風になってしまったら、僕はスタンに捨てられてしまうに違いないと。
そう思って、怯えていたのかもしれない。
でもいずれにせよ、どうせスタンは、自分の都合の良いときにしか僕に逢わないんだから同じことだったんだけど。
どっちだって同じこと。
そんな風に、僕は少しばかり「ふてくされた」ような気分だったんだ。
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