#6 ささやかなデート

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「それがいいわ」 ちらりと天音を見る周子の瞳はやたら色っぽく見えた。 「ねえ、連絡先教えて、スマホ持ってるでしょ?」 「あ、うん……」 答えてから、ないと言ってもよかったかと思いつつ、それを鞄から出していた。 通信アプリのデータを二次元コードで読み取ったのは周子だ、取り込んだデータを見てにこりと、いやニヤリと微笑む。 「これからちょっと用があるからすぐには無理だけど、あとでメッセージを送るわね」 「うん」 天音が返事をした時には周子は悠希の顔を見上げていた、周子の笑みを悠希は好きになれないと思った。 「美人ね、お友達?」 周子の問いに、天音は「うん」とだけ答えた。 「そう、素敵な友達がいていいわね。じゃあ、またあとでね」 挨拶だけは天音にして店を出た、そこで待っていた少女も連れその場からいなくなる。少女の表情を見ればあまり浮かれた様子はなく、どういう関係なのかと思ってしまう。 「天音ちゃん」 悠希に声をかけられその顔を見上げたが、笑顔にはなれなかった。 「……なんか、天音ちゃんのお母さん……思ってた人と違う」 勝手なことだがそんな風に思う。天音の父に会ったことがある、父はとても穏やかな人で、今の女性を伴侶に選んだのが意外なほどに似つかわしくないと思えた。 「……うん」 天音にしても幼いころまでの記憶しかない、溌溂としていて社交性はあった人だった気はしたが、若い男を連れて歩くとは──。 「……ね……お母さんと会う時は、ユキさんも一緒に来てくれる?」 「うん、もちろん」 知治の天音を見る目はいやらしさを感じた、密かに嫉妬を──いや、危険をはらんでいる。 店を後にした周子と知治は足取りも軽く歩いていく。 「──上玉じゃん、周子の娘」
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