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腹が立ちつつも親子だ、この男が一緒でないだけマシだと諦めた。
「あなたと二人きりなんて嫌なんだけど」
悠希は横柄に訴えたが。
「安心しなよ、俺もあんたを部屋に案内したら周子んとこ行くわ」
笑顔で言われたが、それはそれで苛立つ。
「母と娘の大事な話なんじゃないの? 邪魔するくらいなら私と一緒に待ちましょう」
言えば信用ねえなと知治は笑った。
二人は2つ上の階で降りた、先導して廊下を歩く知治がとある部屋の前で足を止めノックする。その動作の意味を悠希は不思議に思う、中に誰かいるのか──答えはすぐに出た、知治が手をかけなくてもドアは内側から開く。
「よお」
声をかけ入って行く、中にいた者もよく来たよく来たと嬉しそうに迎い入れた。
「お友達さん、どうぞ」
呼ばれ、大した疑いもなく踏み入れた、大きなベッドが二つもあるのが目立つ部屋だった。室内には中年男性が二人、だいぶ前に来たのか、二人ともバスローブを着てくつろいでいる様子だった、室内のテーブルにはグラスと共に多くの缶や瓶が置かれている、宴はとっくに始まっていたようだ。
「どうも」
悠希の背後で知治が声を上げる、何事かと見れば挨拶がてら上げた手の中には1万円札が数枚握られている。
「じゃ、あとはよろしく」
その手で肩を叩かれた、なにがどうよろしくなのか問う前に知治は部屋を出て行ってしまう。なんだと文句を言おうと視線を転じると目の前の男がニタリと笑った、奥のテーブルを前に座っていた男もいやらしい笑みを浮かべ立ち上がる。
「本当に背が大きいねえ、いくつかな、180センチくらいあるかな?」
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