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「初めての子はいいよ……ああ、処女とかそういうんじゃなくてさ……下手に場慣れしてくると恥じらいもなく、さっさと終わらそうって感じがさ……束の間の恋人だってことを忘れちゃダメなんだ」
耳元で語られることにぞっとした、ここから逃げねばとドアを開けようとするが、震える手では、サムターン錠を回すことに手間取った、その間に男がドアバーをかけてしまう。
「あの……判りました……お相手はします……でも後日にさせてください……その時には覚悟を決めてお会いしますから……今日だけは……」
必死に懇願したが、男は天音を背後から抱き締め、そのまま部屋の奥へ運ぶ。
「いや! いや! いや!」
足をバタつかせ、男の腕に指を食い込ませて抵抗したが、男は難なく天音の体をベッドへ放り出す。
「嫌……っ」
這って逃げようとする天音をつかまえ無理矢理仰向けにさせると、男はその腹の上に馬乗りになった。
「違うんです! 私は、母と話をするために来たんです! 本当に、こんなつもりじゃなくて……!」
「ああ、胴元さんをママって呼んでたのはそういうこと……胴元さんの娘さんなんだ──」
男は天音を見下ろし微笑みながら言った、それは馬乗りでなどなければ十分に慈愛に満ちた笑みだった。
「ああ、確かに似てるね、美人さんだ」
娘なら見逃してくれるかと瞳に祈りを込めたが、男は見事に裏切った。優しい瞳を天音と目を合わせたまま、ブラウスの上から天音の胸の膨らみを掴み、強弱をつけ揉み押さえつける仕草は何かを確認するようだった。
「いいね、若さを感じる硬さだ」
「いや……っ!」
「君もいずれはあんな女性になるんだろうね、年を重ねても美しく、そして他人に寄生して生きる──商魂逞しい、大した女性だよ」
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