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『やめて! お願い! 悠希くん、悠希くん! 助けて! 助けて!』
今すぐ行くと念じ、泣き叫ぶ声を聞きながらようやくその前にたどり着くなり、悠希は怒りに任せてドアを殴っていた。
「開けろ!」
怒鳴ってからドアの脇にある呼び鈴を押す、ドアを殴り開けろ早くしろと怒鳴りながら押し続けた。
何事かと周りの部屋のドアが開く方が先だった、二つ隣の部屋から顔を出している男性に声をかける。
「友人が拉致されました! ホテルの人を呼んで、ここを開けてくれるよう頼んでください!」
女性の姿で男の声だと男性は戸惑いつつも「ああ」と返事をして部屋に戻った、悠希はそれでもドアを叩き続ける。
「天音! 天音! くそ……! 開けろって言ってんだよ!」
その時ようやく錠が外れる音がした、悠希は躊躇うことなくドアを開ける。
「おや?」
内側にいた男が間の抜けた声を発した。
「男が来たのかと思って怒鳴り返してやろうと思ったら、美女だな、うーん?」
天音が悠希の名を叫び、現にドアの外から男の声がした、すっかり恋人が取り返しに来たのかと思ったが『ユキ』の姿は男の思惑から大きく外れていた。
悠希は戸惑う男を無視し、スカートも気にせず大股で室内に入って行けばその姿を見つける。
「……悠希、くん……っ!」
裸を隠そうとするようにベッドの上で小さくなっている天音がいた。背中が白い素肌を晒し震えている、頬には大粒の涙が伝っていた。
「天音……っ」
声にならなかった、フレアのスカートから覗く足には破れたストッキングが絡まっている、床には下着が一式落ちていた、暴行のあとは顕著だった。
「ああ、なるほど、このお嬢さんは介添えがあったほうがいいかもって胴元さんが気を利かせてくれたんだね。現に暴れて大変だったんだ、ちょっと押さえてもらおうかな。君がお手本を見せるっていうのもいいなあ。そのあと三人で楽しもう、そうだよね、今回はかなり大金を払ったんだ、それくらいのサービス──」
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