#8 今はただ抱きしめて

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天音が身を小さくして呟くように言う、悠希はその肩をしっかりと抱きしめた、力のあまり指が食い込みそうになってしまうのは懸命に堪える。 「嫌なことされたのは事実だけど……それを、たくさんの人に知られたくない……」 されたことは犯罪といえるだろう、だが天音がそういうならばあえて傷つく方を選ぶ必要はない。捜査の仕方によっては浅い傷が深くなることもあるだろう。 「うん、そうね、じゃあとにかく早く身を清めようね。近くのラブホテルとか……ううん、やっぱりうちのほうがいいね、人に会わずに済むから」 悠希の言葉に天音はうなずいた。 悠希は駅前のタクシー乗り場からタクシーに乗り込んだ。電車で二駅の距離だが天音の気持ちを考えれば、できるだけ人に会わない方法を選んだ。 会話もなく山手にある悠希の自宅に到着する。 「お洋服買ってくるわね、トップスだけ?」 寄り道はせずにとにもかくにも家へと急いだ、玄関でパンプスを脱ぐ天音の背に問いかける。 「……下着も、欲しい。あとストッキングと」 パンティーはレース部分が破けている、男が力いっぱい引っ張っただけで音を立てて破けてしまったのだ。仕方なく穿いてはきたが一刻も早く脱ぎ捨てたい。 「うんうん、判った。ごめんね、サイズ、聞いてもいい?」 「……S……上は、65のE……」 「えっとごめん、デザインとか色とかにこだわりは?」 「……なんでもいい、ユキさんに任せる……ありがと」 気遣いが嬉しかった、微笑み答える。 「じゃあトップスもシンプルにTシャツにするわね」 「うん」 「じゃあ行くけど、誰か来ても出なくていいからね」 「うん……シャワー、使っていい?」 「もちろんよ」
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