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天音が身を小さくして呟くように言う、悠希はその肩をしっかりと抱きしめた、力のあまり指が食い込みそうになってしまうのは懸命に堪える。
「嫌なことされたのは事実だけど……それを、たくさんの人に知られたくない……」
されたことは犯罪といえるだろう、だが天音がそういうならばあえて傷つく方を選ぶ必要はない。捜査の仕方によっては浅い傷が深くなることもあるだろう。
「うん、そうね、じゃあとにかく早く身を清めようね。近くのラブホテルとか……ううん、やっぱりうちのほうがいいね、人に会わずに済むから」
悠希の言葉に天音はうなずいた。
悠希は駅前のタクシー乗り場からタクシーに乗り込んだ。電車で二駅の距離だが天音の気持ちを考えれば、できるだけ人に会わない方法を選んだ。
会話もなく山手にある悠希の自宅に到着する。
「お洋服買ってくるわね、トップスだけ?」
寄り道はせずにとにもかくにも家へと急いだ、玄関でパンプスを脱ぐ天音の背に問いかける。
「……下着も、欲しい。あとストッキングと」
パンティーはレース部分が破けている、男が力いっぱい引っ張っただけで音を立てて破けてしまったのだ。仕方なく穿いてはきたが一刻も早く脱ぎ捨てたい。
「うんうん、判った。ごめんね、サイズ、聞いてもいい?」
「……S……上は、65のE……」
「えっとごめん、デザインとか色とかにこだわりは?」
「……なんでもいい、ユキさんに任せる……ありがと」
気遣いが嬉しかった、微笑み答える。
「じゃあトップスもシンプルにTシャツにするわね」
「うん」
「じゃあ行くけど、誰か来ても出なくていいからね」
「うん……シャワー、使っていい?」
「もちろんよ」
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