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あたしは部屋の隅に追い詰められている。
追いつめたのは彼。すごく怖い顔であたしを見下ろしている。
かっこいい。イケメン。心の中で思うけど、口には出さない。
「どういうつもりなんだよ」
声が震えている。やっぱりすごく怒ってる。
「俺はさ、お前に言われたとおりの日に行ったんだよ。そしたらさ、もう終わってたじゃん。お前、嘘ついたんだよな。だましたんだよな」
そう。あたしは彼をだましたの。嘘をついたの。
「俺さあ、めちゃめちゃ楽しみにしてたんだよ。あの特典、めちゃくちゃほしかった。すごくいいじゃん。定期的にみんなが盛り上がってくれて、フィギュアも作ってくれて、最高じゃん。だから早起きして行ったのに。もう終わりましたよって素の顔で言われてさぁ。恥ずかしいし悔しいし、どういうことなんだよ」
だからさ、そういうことなのよ。あなたは騙されたの。思わずにやけそうになるのを我慢して、上目遣いに見上げる。
「何だよその被害者面。詰められてるあたしがかわいそうですみたいな顔。お前が悪いよな。大体お前、一番乗りしたってほんとかよ。あのうすぼんやりしたやつに乗っかって、ぎりぎりのところで飛び降りて一番乗りしたって?どういうことだよ、サイテーだなおまえ」
そうよ。歩くのがだるかったの。だからばれないようにこっそり乗っかって、ギリギリのところで飛び降りたの。一番よ、一番。すごいでしょ。気づかないあいつがバカなのよ。でもあんなバカのことはどうでもいいの。彼があたしのことで怒ってくれてるのがうれしいの。
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