冷酷令嬢の世界~これが私の人生~

1/34
前へ
/63ページ
次へ

冷酷令嬢の世界~これが私の人生~

 目に入る太陽の光で目が覚める。  身体を起こすと、そばにいるメイドが「おはようございます。お嬢様」と微笑んだ。  「おはよう、ミーシャ」  「今日はよく眠れましたか?」  「……大丈夫よ、眠れたから」  私は公爵家の令嬢であるダリア・サルバルド。メイドのミーシャは私の姉のような存在で、大切な家族。  「ミーシャ、今日は街に出かけるから目立たない地味な格好の服を用意して頂戴」  今日の天気は青空で外に出かけるのにちょうどいい。  「お嬢様、今日は王太子様と会う日では……」  ミーシャを困らせたいわけじゃない。ただ、私が弱いだけ。殿下に会えば、胸が苦して、涙が零れそうになる。  「わかってる。殿下に会う時間までには戻るから」  「かしこまりました」とミーシャは言うが、表情は悲しげだった。その理由は私も分かっている。    私の家では家族揃って朝の食事をとる。  「お父様、お母様、お兄様。おはようございます」  私は挨拶をして、席に着く。  「おはよう、ダリア。今日はスターリア殿下と会う日だな」  嬉しそうな父に「はい、お父様」と無理やり笑顔を作った。父は殿下と結婚することを望んでいる。それは母も同じ。ただ、兄だけが私を心配そうに見ていた。隣の席に座っている兄は「……大丈夫か?」と小声で言う。私も両親には聞こえないように「大丈夫です……」と微笑んだ。  食事を終えると、私は部屋へ戻る。その途中で、兄に「ダリアっ」と声をかけられた。  「どうしました、お兄様」  「ダリア、本当は……」  私は兄が何を言いたのか、すぐに察し「お兄様、私は本当に大丈夫ですので、気にしないでください。それよりも、お仕事サボらず頑張ってくださいね」と笑いかける。兄は心配そうに私を見るも「分かった。ダリアがそう言うなら。でも、何か辛いことあれば俺に言うんだぞ」と言って、頭を撫でる。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加