4人が本棚に入れています
本棚に追加
私が七歳の頃に、この国の王太子であるスターリア殿下との婚約が決まった。
初めて殿下とお会いした日。
緊張で上手く話せるか不安だった。そんな私に、殿下は「緊張しなくても大丈夫だよ」と優しく微笑み、不安を拭ってくれた。その時、私は殿下に恋をした。同い年だというのに、殿下は少し大人びていて、笑顔がキラキラと輝いて見える。自分の胸が高鳴って、頬が赤くなるのがわかる。照れている私を見た父が「娘は恥ずかしがりやなもので……、申し訳ないです」と言うと、殿下は「いえ、お気になさらず。ダリア様はとてもかわいいですね」と微笑んだ。でも、それ以来……、殿下と会う機会はあまりなかった。
私は未来の王妃となるべく、王宮に出向いては王妃教育を受ける日々。毎日ヘトヘトになるまで教育を受け、殿下に会う時間なんて全くと言っていいほどない。逃げ出したいほど大変だったけど、殿下の為に、この国の民の為にと思えば頑張れた。
殿下と会えたのは初めてお会いした日から半年後のこと。王宮の庭園に綺麗なバラが咲いたので殿下と共に見て回った。二回目でまだ緊張が抜けない私に殿下は手を差し伸べてくれる。
「よろしければ手を繋いでもいいでしょうか?手を繋げば、緊張も解れるかと」
私は照れながらも「はい」と言って、殿下の手を取る。庭園のバラはとても綺麗だけど、殿下にばかり気を取られてしまう。
「バラ、とても綺麗ですね」
なんて言ってみるけど、本当はバラなんてあまりよく見ていない。殿下は「そうですね。とても綺麗です」と綺麗な顔で微笑む。殿下の方が綺麗だなんて思ったことは言わないで心にとどめておいた。
最初のコメントを投稿しよう!