4人が本棚に入れています
本棚に追加
それから学園に入学する一五歳まで、殿下と会えるのは半年に一回程度だった。殿下はあまり感情を表に出さないので何を思っているのかわからない。会っている時も、ずっと笑顔で……たまに険しい表情をするくらい。
学園に入学する前日、殿下と会う機会があった。殿下は変わらず笑顔で私を迎えてくれる。
「明日から、学校が始まりますね」と私が話しかけると、殿下は「そうだね……、学ばなきゃいけないことが沢山あるから、頑張らないとだね」と微笑む。
「殿下はどのようなことに興味があるのですか?」
私の質問に目を伏せる殿下。
「そうだね……、やっぱり国民がどのような生活をしているか。それが一番気になるね」
いつもは何を思っているのか分からない殿下だけど、その時はとても悩んでいるように見えた。最近、街の治安が少し悪く、辺境では人が人としての生き方すらできないほど困窮している。でも、国の経済力が低下している今、あまり手をかけられる状況ではないらしい。この話は父から聞いたものだけど、王族として生きる殿下にとっては大きな悩みの一つなのかもしれない。
「殿下……、私にできることがあれば何でも言ってください。私は殿下のお力になりたいです、この国の為にも」
殿下の目を見つめ、微笑む私に、「ありがとう」と殿下は笑った。
最初のコメントを投稿しよう!