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03)再会
碧は歌手になる決意し、紆余曲折を経ながらも実力をつけ、28歳の誕生日当日に遅咲きながら歌手デビューを果たすことになった。
碧は高校卒業後も生活でも困難を極め、一般職に就職するも、コミニュケーションがうまく取れない上に不器用が原因で、人間関係が拗れすぐに辞めた。
また、碧の両親は歌手になる事を反対していた。何の取り柄もない子供が歌手だなんて…と軽蔑していたのだ。
剛毅をはじめ、学校関係者が碧の歌は素晴らしい事を認め伝えても、両親は一切認めなかった。
そんな中でも歌う事を諦めず、邁進していった結果が報われた。
碧は一度決めた事は、諦めずにやり通す強みを持っていたのだ。
そして所属事務所の「F-LARGE」は、憧れの雨音潤が所属する事もあり、碧は喜びもひとしおだった。
碧に着いたマネージャーに驚いた。まぎれもなく小学6年生の頃の担任だった剛毅だったのだ。
「剛毅先生!」
「碧、ついに歌手になったか!」
二人は再会を喜んだ。
碧は担任当時と変わらない厳つい雰囲気の剛毅に嬉しさを感じ、剛毅は背丈や落ち着いた雰囲気に成長した碧に目を細める。
剛毅は碧が卒業してすぐに教職を辞め、発達支援に携わり、講演会も行なっていた。そんな中、碧が芸能界デビューする事になり、剛毅の活動に目をつけていた芸能事務所からマネージャーとしてオファーがあった。
そして、事務所は碧の才能と実力と、特性を全て理解した上でプロデビューさせることにしたのだ。
碧は、自分の強みを引き出し、生きづらさを抱える自分を理解してくれていた剛毅と一緒に仕事ができる事を心から喜んでいた。
ただ、剛毅は別な意味で碧の姿に不思議な感覚を覚える。現在の碧を、昔何処かで見たような感じがしたのだ。
何がともあれ二人は驚きながらも再会を喜ぶ。
剛毅は潤の親友でもあることを知り、碧は衝撃を受ける。
「ええー!雨音さんと剛毅先生って友達なんですか!?」
碧の「類は友を呼ばない」と言わんばかりの言い方に、剛毅は苦笑いをした。
「なんだよお前、その言い方、悪いか?」
「あまりにも雰囲気違いすぎるから…」
「うるせぇよ」
剛毅はよく言われる事なので苦笑いした。落ち着いた佇まいの潤と、マイルドヤンキー風の剛毅という正反対の雰囲気の二人が親友なので、言われるのも無理はない。
剛毅と潤は5歳違いの幼馴染で、剛毅が小さい頃は潤がよく面倒を見ていた。剛毅が潤の事務所に入社した事をきっかけに、二人の交流が再開した。
碧は剛毅と1日のスケジュールを確認する事から始まる。これは、不明な事や変更に不安を抱える碧の為にと剛毅が提案した。
スケジュールは変更の可能性がある事も、剛毅はあらかじめ伝える。
時折、突発的な変更に混乱したり、不安を抱える碧だが、可能な限り事前に調べたりして安心に繋げていく。
碧は音楽関係のネット番組の取材では矢継ぎ早に質問を受けるが、碧は急に訊かれることや咄嗟に答えるのが苦手で、答えられないケースも少なくなかった。
「歌手を目指したきっかけは?」
「目標とする人は誰?」
「えっ…あ…えーと…」
碧は普段意識しているにも関わらず、突然の事に頭が真っ白になり答えられない。
インタビュアーも碧に良い印象を持たなかった。
無口で笑わない、答えを貰うのに時間がかかる、時間がもったいない、この歌手は臨機応変も多い世界でやっていけるのだろうかーーと懸念する人間も少なくなかった。
そこで剛毅は取材先に、碧が混乱しないように、質問内容を事前に伝えるようお願いしていた。
碧は人前で喋る事が苦手だったが、この配慮があり、質問の意図を理解し、伝えたいことを伝えやすくなった。
インタビュアーとの信頼関係も築き、良好になってくる。
碧は改めて、事務所の理解と剛毅、理解を示したインタビュアーに感謝すると共に、少しでも咄嗟の事に対応できれば、と思うようになった。
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