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前編 ≪ 王女篇 ≫
そこは女王の住まいが建つ、国の中央の一角だ。
「ユウナギ様!」
想い人に名を呼ばれ、王女は振り向いた。彼に名を呼ばれると、いつも胸踊るのだ。
しかしこのたび、なんだかこれっぽっちも温かな雰囲気はなく、彼はずいぶんと慌てている。
「トバリ兄様?」
「良かった、ご無事ですね? 何か変わったことはありませんか?」
周りがざわめいている。普段は冷静な彼が、血相を変えて走ってきたからだ。
「どうしたの兄様?」
「先ほど女王に憑依した神のお告げです。あなたのお命を狙う者が、ここ中央にいると」
「……ええ!?」
雰囲気なんて、温まるわけなかった。
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