某HRゲームはたぶんこうやって生まれたんじゃないか劇場

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某HRゲームはたぶんこうやって生まれたんじゃないか劇場

 その翌朝、ナツヒとアオジが吉報を持ってきた。参加希望者をまとめるのに3日で済んだようだ。 「すごいぞ。7つの(むら)で約50組の参加意思表示があった」 とアオジが喜んでいる。  予想以上の前向きな応答に、ナツヒも複雑な心情を隠しきれない。 「ねぇ、それみんなさぁ、負けた時の損害というものをちゃんと考えてるの?」  ユウナギはわりと心配性だ。 「考えてないな」  ぼそっと呟いたのは考案者であるナツヒ。 「こういう時、負けることより勝って良い思いをすることを考えるのが、人情というものじゃ」 「日取りは4日後だ。3日間で準備するぞ」  なかなかに急な話で、女子ふたりは意気込んだ。  まず4人は、「人足(にんそく)獲り合い競走」の他に大勢を駆りだす遊戯を考え始めたのだが。 「俺はせっかく男児が集まるなら、武器と投石を体験させたい」 「実益兼ねてるわね。じゃあそういう区画を作ってっと。私は唄や舞いで盛り上がりたいなぁ!」 「競い合うのがいいのじゃ」 「え?」  コツバメの目は輝いていた。 「やはり人は競うことに燃えるのじゃ」  彼女は実に好戦的だった。 「でもおんなこどもだぜ?」 「性別、体格の差なく競える何かじゃな」 「うーん、ひとりを何人かで高く持ち上げて、上に乗った同士が取っ組み合いとか!」 「めちゃくちゃ体格と腕力の差出るだろそれ。殴る蹴るはだめだ」 「じゃあ頭突き?」 「流血もんだそれは」 「頭ダメ、腕ダメ、脚ダメ……」  ユウナギ、考案の降参寸前。 「残るは尻じゃな」 「尻で突く?」  みなの頭上に、尻で人をどーんと押し出す想像の雲が出る。  一応この中では比較的冷静なナツヒが、その雲を散らした。 「他者を直接攻撃するのは無し、競うなら獲り合うのがいい」 「尻で獲り合うというなら……」  尻からはちょっと離れようか、とユウナギに口を挟もうとした3人は一度とどまり、そして揃って口にする。 「「「座席?」」」
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