ちび巫女の機転

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 彼女が固く目を閉じたその瞬間、風の音が掠め、 「うっ……ああああ!!!」 と悲鳴が上がった。  ユウナギが驚いて目をばちっと開けたら、短剣がこぼれ落ち、その持ち主が倒れこんできた。  すぐさま女は上半身を起こし、右肩に刺さった矢を抜こうとする。 「そこまでじゃ」  その声にユウナギは、コツバメとナツヒが配下数名を連れてやって来たのを理解した。 「北方からの間者じゃな。大人しく捕えられ、すべて白状せよ。処罰はその後じゃ」  この時のコツバメには、何かが憑依しているように、ナツヒには見えていた。  その何かとは、一瞬、女神のようにも思えた。本人が話していた前世の姿なのだろうか。  この間にいち早くユウナギを助けようと、地面を確認しながらナツヒは彼女に近寄った。 「大丈夫か?」  そしてその足元を確認するため、配下に松明(たいまつ)を寄せるよう叫ぶ。 「だい、じょう……ぶ。……きゃあああ!」  この隙に、落ちた短剣を拾った女がすかさず首を切り、果てたのだった。 「……徹底した間者じゃの」 「情報は漏らすべからず、ということか」  ナツヒはユウナギの足に絡まった縄を、拾った血まみれの短剣で切り刻んだ。  そしてまだ何も言えず、青ざめているだけの彼女を抱き上げる。  配下がそれぞれの松明を灯すと、周りは用意された罠だらけだった。
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