レアアイテムをゲットした!?

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レアアイテムをゲットした!?

 ユウナギの、ああそうだった忘れてた、という心の声を、ナツヒは聞き洩らさない。 「ええっと、振りかけると黄泉の国への道を示してくれる薬があるって……」  逆にナツヒの、なんだそりゃ聞いてねえぞ、という小さなつぶやきは、彼女にまったく届かずだ。  実際彼は何も詳しいことを聞かされず、兄の急な(めい)で旅の護衛をさせられている。  この旅の目的を馬車に揺られながら聞こうと思っていたら、この王女様は車酔いで何も話せなかったのである。  ところで製作者であるはずの男もやはり、なんだそりゃ、な話だ。   「あれ、違ったかな? 霊魂を黄泉の国に送り届ける薬……とかそんなの?」 「そんなものが作れるなら方法を知りたい」  呆れるどころか、とても真剣な表情の彼だった。 「うーん……もう1回、商人の彼にちゃんと話を聞いてくるんだったわ」 「あいつが何か?」 「あなたの失敗作を捨てるよう頼まれて……」 「ああ、あれのことか。……なくはないが」 「それ、よければ私にも譲って。多くはないけど、銅貨なら出すわ」  そう言いながら懐から袋を取り出す。それを見たナツヒは、あえて何も言わなかった。 「田舎では役所の人間でもない限り、銅貨なんて使わない。持っていても無用の長物だよ」 「あ……」  世間知らずを指摘されたようで、ユウナギは落ち込んだ。 「どうせ処分するものだから別にいい。次があったらふもとから(あわ)でも持ってきてくれ」  そう言いながら、彼はふたりを外へとうながす。 「確か倉庫に残っているはずだ。来い」  住居横の倉庫に入った。  薬と思われる多くのものが硝子(がらす)の瓶に詰められている。この国で硝子はかなりの希少品なのだが。  男は腰を下ろし、(かめ)のふたを開けて確かめた。 「2瓶残っている」  それは硝子ではなく大きな陶器に入っていた。 「先ほど死者をあの世へ送る薬が作れたら、と言ったが……そうだな。これは生者を送ってしまえる薬だ」 「え?」 「つまり、飲んだら死ぬ」 「毒なの……?」 「毒を作っているつもりはないが、失敗作は得てしてそういうものだ。本当に死ぬかどうかは、試してないから分からん」  おいおい危ない薬じゃねえか、とナツヒは思ったが、ここでも口出しせずにおいた。 「渡すからには好きに使ってくれて構わないが、ちゃんと言っておいたからな」 「はい……」  ふたりは背台に甕を乗せ、魔術師の家をあとにした。
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