それは死者が示す道標

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 ふたりはまた3つの(むら)を順に訪れ、荷車庫をまわる。 「これを荷車の後輪に掛ければいいんだな?」 「薬に限りがあるから慎重にね」  民家でもらってきた(さじ)をナツヒに手渡した。 「じゃあ入口は全部閉めた方がいい」 「なんで?」 「闇の中でないと光は生まれないだろ」  だいぶ時間を費やしたが、ふたつの邑の、いくつもの荷車で試してみても何も起こらなかった。3つ目の(むら)でもやはり同じだ。  ふたりは商人の口車に乗せられたかなと落胆気味に、最後の荷車の元に来た。  ナツヒが戸を締め切ったのを確認し、ユウナギは、これが最後の車輪……と疲れでぼんやりしつつも、匙に乗せた薬をふりかける。 「!!!」  その瞬間、彼女の疲れ切った脳天に張る幕に、青白い光が映し出されたのだ。 「ナツヒ……」  呼ばれて振り向いたナツヒの瞳にも、確かにそれは灯る。 「光ってる……。これが死者の示した道標(みちしるべ)!」  薬はもうほんの少ししか、残っていなかった。
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