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プロローグ
広い寝室に若い男女の荒い息が響いている。
男――冷泉凌平{れいぜい・りょうへい}が初めての愛の営みを終え、はあはあと呼吸を乱している早乙女春香{さおとめ・はるか}にキスをする。
「大丈夫だった? すごく良かったよ。ありがとう……春香」
「……ん。冷泉さん……。私、今幸せです……」
「かわいいよ……春香。きみは完璧だ……。僕も最高に幸せだよ。愛するきみを、とうとう手に入れた。六年もかかった。もう二度と離さないよ……」
冷泉が枯れ葉色の瞳で甘く笑った。その顔を見て、春香の胸はキュンとうずく。
――これで良かったんだ。
――私、婚約破棄されて……良かったんだ。
(冷泉課長と恋人になれたんだから……)
春香は五年付き合った彼氏に浮気され、婚約を破棄された。それは春香が今まで生きてきた中で最悪の出来事だった。
しかしそこから彼女の溺愛人生が始まったのである。
冷泉という、ひとりの一途すぎる御曹司の手によって――……。
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