猫の惑星

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猫の惑星

「うっわ、騙された……」  俺は開口一番、そう呟いていた。一緒に降り立ったチェルシーも同じく苦い顔をしている。 「全くね。これは、情報課の人達にクレームを入れなくちゃいけないわ」 「まったくだ。誰だよ、此処が緑溢れた猫の惑星だなんて言い出したのは」  俺とチェルシーは、地球から派遣された惑星調査団のメンバーである。  現在、資源が枯渇する寸前の地球を救うべく、各国からよその惑星を調査する宇宙飛行士の団体が次々と派遣されているのだ。俺達もその一人というわけである。便利なことに、昔と違って今は堅苦しい宇宙服を着る必要もない。ボタン一つで酸素バリアを張れるブレスレットがあり、それの使い方さえマスターしていれば何の問題もないのだ。  これは、百年ほど前に地球に来た異星人から貰った技術であった。  惑星国家トレカッタから来たというタコみたいな異星人は、地球に様々な文化とテクノロジーを齎してくれたのである。彼の来訪がなければ、人類はひたすら地球で滅びの時を待つばかりだったかもそれない。  トレカッタから学んだテクノロジーで地球の国々はますます発展して便利になり、かつてより遥かに簡単に宇宙に飛び出すことが出来るのようになったのだった。  ワープ技術に、負担の少ない宇宙服の技術、より頑丈な宇宙ステーションやスペースタワーの建築などなど。トレカッタ星人にはまさしく頭の上がらない地球人である。  そして地球の外に自由に飛び出すことが出来るようになったお陰で、地球人はよその惑星と交流したり、資源の採掘を行うようなことができるようになったのだった。今地球で石油に代わって主流となっている燃料、コルボナータ石も、よその惑星で採掘されたものである。  今の地球人の目標は、よその惑星により多くのコルボナータ石を見つけて持ち帰ること。そして、他にも有用な資源や新天地がないかどうかを調査することにあるのだった。なんせ地球の人口は増える一方である。そろそろ他の惑星に移住できる仕組みを整えなければ、資源があっても住める土地が足りなくなってしまうだろう。 ――今回のミッションも。……ゾクハルト星人からの情報提供だったって話だけど。  アメリカから派遣された俺とチェルシーは、組織の調査課の情報を元にこの星に降り立ったのだが。  見渡す限り石、石、石。  コルボナータ石ではなく、本当にただの岩壁が広がるばかりの光景なのだった。さながら月とそっくりの荒野なのである。ガセネタを掴まされた、としか思えなかった。 「どうする、トーリス?」  チェルシーが困ったように眉を顰める。 「せっかく手間暇かけて来たのよ。何の成果もありませんでした、じゃ流石にね……」 「だよなぁ。……一応調査はするか」  俺は既に疲れた気持ちで、一歩前に踏み出したのだった。
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