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「ごめんなさい。3日前に、冷やし中華に告白されて、OKって返事しちゃったの……」
5年前から好きだった生ハムちゃんに告白したらそう言われて、フラれた。
僕は顔がいいタイプのメロンだから、完全に油断していた。生ハムちゃんもきっと僕のことが好きに違いないから、他の子と付き合うわけないと勝手に思い込んでいたんだ。
「そ、そっか。ヒヤシン優しくていいヤツだもんね。ヒヤシンといたらきっと楽しいと思うよ」
最大限の強がりだった。ヒヤシンとはあまり話したことないから、いいヤツかなんて知らない。ヒヤシンの優しいエピソードを聞いたこともない。むしろ、わりと冷たいヤツという噂の方がよく耳にする。けれど、ここで他人の彼氏を貶すのはみっともないから、褒めることにした。
黙っていたら黙っていたで、きっと涙を流していたと思う。それくらい僕は、生ハムちゃんのことが大好きだった。
「もう少し、もう少しだけ早く告白してくれれば、私はOKしたのに……」
「好きだったんだよ、メロン君のこと。でも、私には告白する勇気はなかったから、待ってた。けれど、メロンが私に告白してくれることはなかった。だから思ったんだ、メロン君は他に好きな人がいるって」
「そんなタイミングで、冷やし中華に告白されたから、つい嬉しくなってOKしちゃった。ごめんねメロン君」
なにそれ……?
僕があと4日早く告白していれば、僕はOKをもらえていたかもしれないってこと?
え、そうなの……?
やっぱり、生ハムちゃんは僕のことを好きでいてくれたんだ。
悔しい。なんだろうこのスモークされたようなモヤッとした感情は。
タイミング次第ではオッケーもらえてた可能性があった。最初から脈がなかったのなら、自分ではどうすることもできないと、諦めはついた。だけど、今回の場合は、僕が勇気を出してもう少し早く気持ちを伝えていれば、生ハムちゃんは付き合っていたかもしれない。OKをもらえてたかもしれない。
僕のせいだ。なんの言い訳もできない。
ただ、僕に勇気がなかっただけだ。
とはいえ、どんなに後悔したところで、時間が戻ることは、ない。1日は24時間と決まっていて、今のところそれを変えることは不可能である。
「ありがとう。僕のことを好きだったと言ってくれて」
ありがとうと生ハムちゃんに伝え、僕の初恋は終わりを告げた。
悲しいな。人生って……
――その日は、犬が庭を駆け回らないレベルの雪が降っていた。
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