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ゆっくりと腰を落ち着けた私たちに、マリンはお茶を淹れてくれる。
ジュール家の侍女が淹れてくれるお茶は、どれも美味しい。茶葉も高級なんだろうけど、淹れ方も上手なのだろう。
お茶を飲んでリラックスしていると、オスカーが話を始めた。
「王家からアオが招待された」
「え!?」
王家から招待? どうして? 私、なにかやっちゃった?
動揺する私を見て、オスカーが小さく笑う。ルイーゼも、肩を震わせながら笑っている。
二人ともどうして笑うの!?
私が拗ねた顔をすると、ルイーゼはクスクスと笑いながら言う。
「アオお姉様ったら、招待って言われているのに怯えるんですもの。まるで、怒られるのを怖がる子どもみたいですわ」
「え? そうじゃないの?」
「どうして怒られるんだ。怒られるようなことをしたのか?」
オスカーも呆れている。
怒られるようなことはしていないけれど、招待される覚えもない。
そう言うと、オスカーは、私が王家から招待された理由を教えてくれた。
「アオがクラフト職人の才能を持つという話をしたら、王妃が関心を示したようだ。ぜひ、アオがアクセサリーを作るところを見たいとおっしゃっている」
「王家の方がどうして知って……って、そうか。オスカーが報告してるんだ」
「あぁ。アオは異世界からの召喚者だからな。変わったことがあれば、すぐに報告を入れることになっている」
「そうか……。じゃあ、思い浮かべるだけで材料が変化することも?」
「あぁ。手を触れながら思い描くだけで、形を変えることができる、そんな能力を持った人間なんてこの国にはいないからな。おまけに、クラフト職人のように力も付与できる。王妃だけでなく、王もとても興味を持っているらしい」
「ということは、王様と王妃様の見ている前で、何か作らなきゃいけないってことだよね……?」
「そうなるな」
うわー、めちゃくちゃ緊張する!
元々すぐに緊張する質だし、プレッシャーに弱い私。そんな私が、高貴な人たちの前でアクセサリー作りなんてできるんだろうか。……不安だ。
そんな私を見て、ルイーゼは確信に満ちた笑顔で応援してくれる。
「アオお姉様なら大丈夫ですわ! 王妃様も、お姉様の作るアクセサリーの虜になると思います!」
「そ、そうかな?」
「そうですわ! お兄様もそう思うでしょう?」
可愛らしく小首を傾げながら尋ねるルイーゼに、オスカーは目尻を下げる。
さすが、妹大好きお兄ちゃん。思い切りデレている。
「それはわからないが、どちらにしてもアオが気にすることはない。必要以上に気負わなくていいのはもちろん、無理をすることもない。いつものアオで臨めばいい」
「そうですわね! お兄様のおっしゃるとおりです」
王家の前で披露するのだから頑張れ、なんて言われると思った。
でも、私にプレッシャーをかけないように配慮してくれたオスカーの言葉に、少し安心する。「いつもの私でいい」というのがありがたい。
といっても、いざ彼らを目の前にしたら、絶対緊張しまくると思うけど。
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