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「お兄様、それはいつですの? 王宮に行くなら、ドレスを仕立てなくては!」
「ド、ドレス!? いいよ、そんなの。失礼にならないくらいの……ワンピースとかで」
ドレスなんて慣れないものを着たら、それこそ、いつもの力が発揮できない気がする。
それに、仕立てるって、つまりはオーダーメイドってことだろうし、居候の私には勿体なさすぎる!
「急なんだが、二日後だ。王も王妃も公務で多忙だからな。だが、いくらなんでも二日後は急だと言ったんだが……申し訳ないと頭を下げられると、承知せざるをえなかった」
国のトップに頭を下げられたら、それは断れない。
でもまぁ、私は毎日ここでのんびりさせてもらっているのだし、二日後でも全然問題ない。
「アオお姉様のドレス姿、見たかったですわ」
ルイーゼはとても残念そうに肩を落としているけれど。
ちなみに、彼女は自分のドレスを私に着せようとしたことがある。でも、私は断固それを拒否をした。
だって、ルイーゼのドレスを私が着られるはずないから!
そもそも体型が全然違う。
ルイーゼはまるで人形のように整った体型で、とにかく華奢だ。彼女のドレスが私に入るとは思えない。コルセットをつけても無理。これには自信がある。
「明日、王都で人気の店に行く。そこで、王宮に着ていく服を買おう」
「え……と、いいの、かな?」
一人立ちしたら購入費用は返そうと思うけれど、人気の店とか……大丈夫だろうか。私が払えるような店だろうか。ちょっと嫌な予感がする。
「私も行きたいです! アオお姉様のワンピースを一緒に選びたいですわ!」
「ルイーゼ……!」
「だめだ。最近は調子がいいようだが、昨日お茶会に行ったばかりだろう? それで明日、王都に行くのは無謀だ。また寝込むことになるぞ?」
「大丈夫です! アオお姉様のネックレスがありますもの」
「万能じゃないんだぞ。それに、もし明日以降お前が寝込むことになったら、アオが気にするだろう」
ルイーゼはハッとしたような顔になり、やがて目を伏せた。
「……こんなことなら、お茶会は欠席すればよかったです」
しゅんとするルイーゼがかわいそうになってくる。
普通の人ならこんなことで行動制限なんてかからないけれど、ルイーゼは違う。彼女は身体が弱くて、体力もないから。
お茶会の後だって、少し疲れたような顔を見せていたことを考えると、明日王都に行くなんて無謀。オスカーは正しい。
でも、がっかりしているルイーゼを見ると、一緒に行きたいなぁなんて気持ちもわきあがってくる。
「ルイーゼ、聞き分けてくれないか?」
オスカーが、優しい声でルイーゼを宥める。
ルイーゼは上目遣いでオスカーを見ると、コクリと諦めたように頷いた。
「わかりました。それでは、アオお姉様の衣装選びはお兄様にお任せしますわ。お姉様のために、素敵なお洋服を選んでくださいね。お姉様、当日はめいいっぱいおしゃれをしましょうね! 私、今から楽しみです!」
一転して、にこにこ笑顔になるルイーゼ。
え? ちょっと待って?
「オスカーは、騎士団のお仕事があるでしょう? 私はサラと……」
「問題ない。俺が行く」
ええええええーーーーっ!?
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