06.王都にお出かけ

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 *  元のワンピースに着替え、私とオスカーは王都を散策する。  着てきたワンピースもちょっとしたお出かけ用の上品なものだったので、ヘアメイクはそのままだ。  散策といっても、ただぶらぶら歩いているのではなく、私たちはとある場所に向かって歩いていた。  今日のもう一つの目的、王都に与えられた私の家を見るために。  周辺に何があるのかもいろいろ把握したかったし、どんな人たちがいるのかも、実際に歩いてみて体感したかった。  だから、こうやってのんびり歩いているわけだけれど……。  さっきから、注目されまくりなんですが!  いや、少し考えればわかることだった。  見目麗しすぎるオスカーが歩いていたら、そりゃ注目するに決まってる!   老若男女問わず、皆がオスカーに見惚れていた。  中には貴族の令嬢もいて、オスカーに話しかけたそうにじっと熱い視線を寄越すのだけど、オスカーは全く気にしていない。絶対気付いているはずなのに、気付いていない振りをしている。  オスカーは公爵家の令息なので、それ以下の身分の人が、自分から話しかけることはできないのだそうだ。話をするなら、オスカーから声をかけられる必要がある。  ……貴族って、ちょっと面倒だ。  本来なら、私なんてオスカーと話をすることや、こんな風に一緒に歩くことも許されない。異世界からやって来たとはいえ、聖女じゃないからただの平民だし。  ジュール家で保護してもらっている身であり、彼らがよくしてくれるから、敬語もなにもなく普通に話せているだけ。  そんな事情を知らない人からすれば、私のやっていることは不敬だらけだろう。  ……まぁ、私の事情を知らない人の方が珍しい、らしいけれど。  あ、今気付いたけど、周りの人たちがジロジロこっちを見てるのは、私のせいもほんの少しあるかもしれない。  「間違い聖女はこいつか!」みたいな感じで。  その時、美しく着飾った令嬢が、私たちが通り過ぎるまさにそのタイミングで、バランスを崩し、倒れそうになった。 「あ!」  危ない、と叫びそうになったけれど、その前に令嬢はオスカーに抱えられていた。オスカーにもたれかかる令嬢は、申し訳なさそうに小さく頭を下げる。 「お怪我はありませんか?」 「はい。助けていただき、ありがとうございます。オスカー様」  彼女は顔を上げ、儚げに微笑む。  煌く金の髪、エメラルドのような美しい緑の瞳、まるで陶器のような肌。これぞお姫様! というような美女だ。  彼女は潤んだ瞳でオスカーを見つめ続ける。その頬は、薔薇色に染まっていた。  あー……この令嬢、間違いなくオスカーに気がある。ううん、気があるどころじゃない。すっごく好き、だ。 「オスカー様には、助けられてばかりですわね」 「……体調のよくない時は、外出されない方がよろしいかと」  いやいやいや、その返しはどうなの? 「オスカー様をお見かけすると、つい嬉しくて舞い上がってしまうのですわ。そして、いつもオスカー様にご迷惑をおかけしてしまう私……。本当に申し訳ございません。ですが、こうして王都でお会いするのは、もう何度目でしょうか。一度は偶然かもしれませんが、二度目、三度目となりますと、もうこれは運命に違いありませんわ。私、そう思っておりますの」  え、ちょっと待って。もう何度もこうやってオスカーの前で倒れちゃってるの、この人? それはちょっと怪しすぎない?
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