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「……まぁ、なんて素晴らしいのかしら!」
私の作ったイヤリングを見るやいなや、王妃様が感激したように声をあげた。それがきっかけとなり、一気に辺りがざわざわとし始める。
王妃様がイヤリングを手に取り、いろんな角度から眺める。
その間、私はとにかくドキドキしっぱなしで、疲れているはずなのに心は興奮状態になってしまって落ち着かない。
「天使の羽がモチーフなのかしら?」
銀で作った装飾について、王妃様が尋ねてくる。
私は緊張しながらそれに答えた。
「天使でもあるのですが……私的には女神様をイメージしました。王妃様のお姿が、そのように見えましたので」
「あら、お上手ね」
「いえ! 本当にそう思ったのです! 王妃様をイメージしてこのイヤリングを製作させていただいたのですから!」
決してお世辞なんかじゃない。というか、私にお世辞なんて言える器用さはないのだ。
王妃様を見た時、本当に女神様のようだと思った。王妃様が身に付けるに相応しいイメージを形にした、ただそれだけだ。
「こんなに繊細な細工は初めて見るわ。ふわふわとした柔らかい質感まで表現されていて見事。それに、この柔らかな羽に守られるようにトパーズが包まれていて、可愛らしくもありそれでいて上品で、素敵なデザインだわ」
「ありがとうございます」
「私、早速つけてみたいわ」
王妃様が表情をほころばせながら振り返ると、王様が立ち上がり、こちらに来られる。そして彼女の手からイヤリングを受け取り、それを彼女の耳に飾った。
「ほぉ……よく似合おうておる」
「本当ですか?」
すると、すぐさまサッと出される手鏡。王妃様の侍女もデキる!
耳元を飾るトパーズのイヤリングが鏡に映し出され、それを見た王妃様がうっとりと溜息を漏らした。
「素晴らしいわ。私、とても気に入りました」
「アオ、礼を言わせてもらおう。よくぞこれほど素晴らしいものを作ってくれた」
「ありがとう、アオさん。このイヤリング、素敵な上に、なんだか疲れが取れていくような気がするのだけれど……もしかして、癒しも付与してくれたのかしら?」
こんなにすぐに気付いてもらえるとは思わず、私はあたふたしながら頷く。
「はい。ご公務でお忙しいだろうと思い、少しでもお疲れが取れればと……」
「ふふ、あなたはとても気遣いができて優しい人なのね」
「いえ! とんでもございませんっ」
「アオ、このイヤリングをレベル測定させてもらうぞ」
「はい。もちろんでございます」
防御を付与してほしいってことだったし、どれだけ付与されたかは当然気になるだろう。
一応、割合を考えて付与したはずだけれど、本当にそうなっているかどうか、私も気になる。
そうなっていなかったから、やり直させてもらえるかな……なんて思いながら、私はイヤリングが測定されるのを、固唾を呑んで見守っていた。
「おぉ……!」
イヤリングはレベル測定器に乗せられ、すぐさま大きな画面が現れ、そこに数値が表示される。
防御:523/アオ 癒し:480/アオ、魅力:350/アオ
思ったよりも随分高い数値が出て、私自身も驚いてしまった。
割合的には大体思ったとおりで、防御が一番高くてよかったと胸を撫で下ろす。
「これはすごい! 二つの力で、すでにクラフト職人と同等の数値を叩き出すとは……!」
「クラフト職人の才があるとは聞いていたけれど、もうクラフト職人ね。今活躍している彼らの中でも、二つの力をこれだけ高い数値で付与するのは難しいのよ? それをもうやってのけてしまうなんて、本当に素晴らしいこと!」
国のトップお二人に盛大に褒められ、嬉しいやら戸惑うやらで、なんと言っていいのかわからない。
私はひたすらバカの一つ覚えのように「ありがとうございます」ばかりを繰り返す。
どう反応したらいいのか、助けを求めるようにオスカーがいる方へ目を向けると、オスカーは嬉しそうに微笑んでいた。
オスカーが、今までで一番笑ってる……。
オスカーは基本厳格な感じで、邸の中でもあまり表情は変わらない。時々口角が上がったり、眉や目尻が下がったりするくらいだ。
ルイーゼと接している時が一番柔らかな表情をしていると思うのだけど、今はそれ以上に見える。
──王と王妃の賞賛を、私以上に喜んでくれている。
そう思ったら、鼓動が急速に早まった。ドキドキとうるさいくらい音を立て始める。
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