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「おい、手が止まってるぞ。集中しろ」
これまでのことを考えていたら、伊織にノートで頭を軽く叩かれる。伊織は呆れたように言った。
「そんなに本命チョコを作るのが大事なのかよ?」
「当たり前じゃん!本命チョコ=彼氏ってことでしょ!作ってみたいもん!」
どんなチョコレートを用意しようか一生懸命考えて、ドキドキしながら渡して、それからデートをしたい。妄想が膨らんでしまう。
(でも、大学の男の子とは伊織がいるせいで仲良くなれないし……。そうだ!)
いいことを思いついた。私はテーブルを思い切り叩きながら立ち上がる。バン、と大きな音が響き、伊織はビクリと肩を震わせた後、「は?何?」と訊ねる。私は満面の笑みを伊織に向けた。
「私、マッチングアプリに登録する!そうしたらすぐに彼氏できるよね!」
「はあ?お前、何言ってんだ。大体、まだ勉強の途中でーーー」
伊織がまだ喋っている途中だけど、一刻も早くアプリに登録したくて、「もうわかったから、大丈夫!」と言い鞄の中に荷物を詰め込む。
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