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大樹と少年
空は青く澄んでいる。
小高い丘の上に大きな木が一本、立っている。
太い枝に、小さな人形がくくりつけられている。大きさは人の手のひらほど、坊主頭で肌は茶色。
木の前に立って十代前半の少年と十代半ばの少女が人形を見つめる。
「これ、きっと呪いの人形だろ! 恨みや怨念が込められてるんだよ!」
興奮する少年に少女がため息をついてから言った。
「こんなのがそんなに面白いの? あんたが『近所にすごいものがあるから見にいこうぜ!』っていうからついていってあげたのに。きっとこの近くにあった落とし物を、見つけた人がわかりやすいように枝にくくりつけただけでしょ」
「それはな、昔、この近くで大きな火事に由来するものじゃよ」
二人の後ろに、いつの間にか老人が立っていた。
突然、現れた痩せこけた荒れた肌の老人が話し出す。
「この辺りで八十年前に戦争あってな。それはひどいもんだった。敵国の軍隊は、『黒い炎』という火炎放射器を使った。防護服を着ていないと、吸い込んだだけで体に重い障害がのこる。そんなものを使ってここらいったいを焼き尽くした。人もものも全て燃えて灰になった。わしがその悲劇を忘れないようにと、こうしたのじゃ」
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