2人が本棚に入れています
本棚に追加
飢え
空は厚い雲に覆われて灰色だ。
寂れた町の、路地裏に何人もの人が仰向けになっている。皆、衣服はボロボロで、肌は緑色に変色している。
彼らの前に一組の親子が立っている。
背が小さくやせ細った子供。その隣にはハゲた頭の父と歯がほとんど抜け落ちた母。
この家族は金がなく、家を追い出されて食うに困っている。ウイルスの感染が拡大し、経済が混乱した影響で職と収入を失ったのだ。
母が息子と夫に言った。
「やっと見つけたね! 二人とも今日のご飯はこの人たちだよ」
三人はそれぞれ、倒れている人に近づき、衣服を破って肌に噛み付く。
夜空に月が浮かんでいる。
路地裏に、防護服を着て火炎放射器を手にした四人の男がやってきた。
男の一人が言った。
「ゾンビになるウイルスってのは本当におっかないね。まぁ、ゾンビになったこところで衰弱してるからほとんど動かないらしいけどさ。うわ!」
倒れている人たちの中に男と女、そして二人の子であろう少年がいるのを見つけた。
そして誰かがぼそっと呟く、
「これを焼けってのかよ。……やってらんねぇ」
最初のコメントを投稿しよう!