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31 「どうも、初めまして。今年入社しました、榎木藍です。」 「同じく今年入社の関悠二です。」 「営業一課の期待の新人二人です。これから何かとお世話になるでしょうから、宜しくお願いしますね」 宝井が新人二人の背中に手を当て坂巻と聖に紹介する。 聖はすぐに吟味するように顎に指を添えながらフフッと微笑んでみせた。 「榎木くんに関くんな!二人ともイケメンやないですかぁ〜、こりゃ、サロンまわりしたら女子がキャーキャー言い出しますよ」 聖は姿勢の良い藍の周りをゆっくり歩いて、この間染めたばかりの襟足のネイビーブルーの毛先を摘んだ。 「エエ色ですね。におてはりますよ」 藍は目だけで聖を追い、「ありがとうございます」と冷たく言い放った。 いつも愛想の良い藍の態度に宝井は頭を掻く。 宝井の事を、人の事に関してはは敏感と捉えた関の読みは外れていない。宝井は藍が聖に対して敵意を剥き出しにしている事に気づいた。そりゃ、初っ端があんな風に文也を抱き寄せてしまうところから始まれば致し方ないと言ったところか。 「じゃ、今日は宜しくお願いします」 宝井がそう言って、メーカーからの商品説明が始まった。 今回はサロンで使用するトリートメントの新商品だ。最近は髪質改善が流行で、トリートメントの需要は高い。美髪を作るには必須と言えるアイテムだからだ。 2時間程経った頃、聖が資料を机でトンとまとめ「休憩しましょう」と言った。 腕時計を確認した文也は「そうですね」と相槌をうち、コーヒーを出す為、席を立った。 「高橋さんっ!タバコ行くでしょ?ご一緒させてください」 聖がすかさず文也の腰に手を回す。 本当に油断も隙もない男である。 すぐさま藍が文也の肩を引き寄せ自分が間に入った。 「俺も行きます。」 藍の言葉に文也はコーヒーを用意するつもりだったのを忘れそうになる。 「ぁ…えっと…僕はコーヒーを」 何とか目的を伝えると、後ろから関が「用意しておきます」と言った。 喫煙所に行かない理由がなくなってしまったわけだ。
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