200%君が好き!

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 ***  二度目になるが。  私は探偵というやつに向いていない、と思う。人を探ろうとすればすぐボロがでるし、尾行していたら多分空き缶踏んでスっ転んですぐばれるという奴だと思う。  ただ、こればっかりは人に頼るわけにもいかない。というわけで、私は彼の職場がある駅まで足を運ぶことにしたのだった。 「あーいいなあ……サヤ。結構高いお店行ってんじゃん……」  電車に乗りながら見るのは、妹がやっているツイッターだ。彼女は既に婚約している彼氏と一緒によく若者向けのショッピングモールに繰り出している。今日も今日とて、そのデートの様子をツイッターに投稿しているようだった。本人の顔出しはしていないので、流石にそこは気を付けているようだった。  彼も本日オフであるようで、彼氏とレストランで食事をしているらしい。セイヤの美容室がある駅に降りたところでもう一度見ると、今からショッピングして帰りますー!という新しい投稿が来ていた。 「ん?」  私はその町の風景に眉を顰めた。顔を上げる。もう一度スマホを見る。また顔を上げる。――間違いない。 「あいつ、此の近くに来てんの?」  妹がアップしている町の風景が、たった今私が降り立った駅前広場とそっくりだったのだ。そっくり、というかそこのコンビニの看板の位置といい、ビルの名前といい、間違いなく同じ場所である。彼氏の手が映り込んでいるので、二人で一緒にいるのは間違いないようだったが。 ――彼氏とショッピングモールデートか。羨ましいなあ。  もし見かけたら声をかけよう。それくらいの気持ちで、なんとなく周辺を探す。とりあえず、今日の目的はセイヤの美容室だ。駅の西口を出て三分くらいの場所にあるはずである。二回しか足を運んだことがないので、ちょっと場所がうろ覚えだ。  きょろきょろしながら歩いていくと、丁度シフトを終えたセイヤが出てくるところだった。やけに周りを気にしている。誰かと待ち合わせをしているのか、と私はこっそり後ろをついていくことにした。気分は名探偵ならぬ迷探偵である。今時の探偵は多分、電柱に隠れて尾行なんかしないだろう。 ――何処行くんだろ。駅とは真逆に歩いていったけど……?  彼の後ろをひょこひょことついて行った私は、目を見開くことになったのだった。彼が辿りついたのは、結婚指輪なんかを売っている高いジュエリーショップだったからだ。  しかも、店の前で待っていたのは。 「サヤ!?」 「……あれ、姉貴?」 「ん?サヤの姉貴?」 「え、え、あーちゃん!?」  あ、私の馬鹿。思わず声を上げてしまってから慌てて隠れたってもう遅い。  振り返ったセイヤと、サヤと、サヤの彼氏は。三者三様の顔で私を見たのだった。二度目になるが、やっぱり私は探偵に向いていない。
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