200%君が好き!

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200%君が好き!

「とにかく、絶対にバレないようにして。バレたらマジでやべーから、な?」  家に帰ってすぐ、聴こえてきたひそひそ声。喋っているのは同居している彼氏のセイヤだ。私は眉を顰める。彼の声が明らかに、秘密のお話をしていますといったものだったからだ。どうやら、携帯で誰かと電話をしているようだが(この家には家電を引いてないためだ)。 「……いやいやいやいや、それは駄目、絶対駄目!あーちゃんそういうの鋭いから、バレたら殺されるっしょ!?」  あーちゃん、というのは私の渾名である。何やら嫌な予感がする、と私はこっそりリビングを覗く。すると、電話を耳に当てて、一心不乱で喋っているセイヤの後ろ姿が見えた。今時珍しい、派手な金色に染めた髪。それがここまで似合っている人も珍しいだろう。ロックバンドのボーカルかと思うような見た目だが彼は一応美容師である。自分の顔立ちなら髪染めてた方がお洒落に見えるから!というのが理由らしい。  やや猫背で、電話の向こうの人物に何かを話している。僅かにくぐもった声が漏れ聞こえてきた。――電話の相手は、女性のようだ。話している内容までは聞こえないが。 ――ま、まさか浮気!?  慌てて身を乗り出したところで、バッグが思いきり壁に激突した。しかもその衝撃で、何もないところですっころんだ。  どんがらがっしゃん!と派手な音を立てて倒れる私。結論、私は探偵には向いていない。 「!?」  ぎょっとしたように振り返るセイヤ。彼は、顔面を強打して悶絶している私を見て、露骨に慌てた顔をした。 「ちょ、帰ってきてるなら帰ってきてるって言ってよ!?……ていうか、あーちゃん何してんの?オデコ、大丈夫?」 「……いちゃい」 「だろうね!」  慌てて救急箱を探しに行く彼に、なんだか毒気を抜かれてしまった。いつの間にか、電話も切っていたらしい。  その結果、私は電話の内容を問い詰めるタイミングを見失ってしまったのである。
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