New Year's Eve を君と・・・

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◆◆◆◆◆  大みそかの駅構内は帰省客でごった返していた。  皆が手にキャリーバッグや土産を持って行き来する中、岸田は目を凝らして室井が改札を通るのを待っていた。しかし、人の往来が多すぎて分からない。もしかしたら出てしまったかも…… そう思いながらキョロキョロしていたら ポン! と肩を叩かれた。振り向けば黒縁メガネの顔が笑っている。 「義兄(にい)さん!」 「目の前を通り過ぎたのに全然気づかないんだもん」 「なんでだろう、必死で探してたのに」 「俺は階段から降りて来る時から分かったよ。相変わらず目を引く風貌だからね」  そう言うと、親しみのこもった瞳で見つめてきた。  彼は、岸田が同性愛者と露見しても偏見を持たずに接した一人だ。親と絶縁状態になったあとも何事もなかったように電話をよこし、こうして逢ってくれる。そんな彼は、姉との結婚当初より岸田に好感を持っていて、親戚の集まりがあると必ず横に来て話しにきた。以前、酔っぱらった時にチラシの裏に岸田の顔をデッサンし、あまりの上手さに注目を集めたこともあった。その時の彼のセリフがこうである。 「記録に残したくなるような造形なんですよ、怜君の横顔は」 「はい、土産」そういうと、室井は手にした紙袋を岸田に手渡した。 「前に『旨い』と喜んでくれた饅頭。いちごミルク味が期間限定で出たんで買ってきた」 「あ、嬉しい!」 「最後に会ったの、いつだっけ?」 「えっと…… 2年前かな。今のところに再就職した年だったから」 「大学病院を辞めて調剤薬局に移ったんだよね。どう? 仕事は」 「ベッド数二百の総合病院の門前なんだけど、毎日処方箋に追われてますね」 「一日何枚来るの?」 「百枚くらい」 「それを何人でさばくの?」 「薬剤師と医療事務合わせて八人」 「よくわかんないけど大変そう」 「大学とは違った忙しさがありますね。ちなみに僕が店長です」 「へぇ、店を任されてるんだ」 「そう見えないでしょ?」 「怜君ならソツなくやってそうだ」そう言うと、室井は腕時計を見て提案をした。 「俺、昼飯食ってないの。ちょっと付き合ってくれる?」
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