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口には出さなかったが、より一層密着して歩く女子二人の姿を見て、俺は少し同情してしまう。──正確には、一方の女子は特に怖がっている様子はないのだが。
「理科室もスゲーな、ホルマリンとか中身まできっちり入ってんじゃん」
そういう勝行は、手近なホルマリンの瓶を手に取ってしげしげと眺めている。マップ内には触れられないものもあったりするが、基本的にはどのオブジェクトも触れることができるように作られている。
蛙らしきものが入ったホルマリンの瓶は、埃で汚れていて中身をはっきりと視認することはできない。勝行が腕を振る動きに合わせて、たぷたぷと水音まで聞こえてきた。
「ウチの学校にもあるけどさ、あんまこういうのマジマジ見たりしねえもんな。キッモ」
瓶をライトで照らす洋司は、渋い表情をしながらも瓶にその顔を近づけている。
俺も棚に置かれたホルマリンのひとつを覗いてみるが、あまり見ていて気持ちのいいものではない。どこからともなく、薬品の匂いすらしてくるような気がした。
「学校の中だとさ、やっぱ理科室と音楽室とかがホラーの定番だよね」
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