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そういった危険性をゼロにした上で楽しむことができるのも、バーチャルの世界の良いところだった。
六畳ほどの自室の中で、パソコンに向き合った俺はヘッドホンを装着する。少し値は張ったが、遮音性が高く音質も良いものだ。少ないバイト代を注ぎ込んだが悔いはない。
ゲームを起動してから、接続したVRゴーグルで目元を覆う。こうすると、一気に現実世界から遮断されたような気分になる。俺はこの瞬間が好きだった。
少し待つとタイトル画面が現れ、俺は慣れた手つきでゲームパッドを操作していく。
フレンドからの招待を受けて画面が切り替わると、そこは見慣れない古びた教室の中だった。今回の目的地として選ばれたのは、廃墟と化した二階建ての木造校舎だ。
「……うわ、超リアル」
このゲームの売りは、自由度の高さに次いだマップのリアルさだった。
実在する場所を参考に制作されたとの噂だが、とても作り物とは思えない。目の前にある机を見ても、普段教室で目にしている机そのものと同じなのだ。実写だと言われても信じてしまうだろう。
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