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「んじゃ行くぞ、遅れんなよ」
そうして勝行は、教室の出口へと向かっていく。その後ろに洋司、怖がる西村をぴたりと腕に張り付かせた惠美が続いていく。
必然的に最後尾となった俺は、歩くたびにギシリと軋む床の音のリアルさに、恐怖と感動を覚えていた。
VRの世界では、リアリティを追及するのであれば、映像のほかには音にこだわるしかない。
商業施設などで体験できるVRであれば、揺れや匂いなども追加されるのだが、さすがに自宅で体験できる範囲には限界がある。
それでも教室の引き戸を開ける音や、時折どこからか吹き付けてくる隙間風の音は、まるで本物そっくりのものだった。
ゲームパッドを伝って、繊細な振動も感じられる。そんな技術の進歩に感心していると、先頭を歩く勝行が廊下の突き当りにあった教室の扉を開けていく。
西村の小さな悲鳴がやたらと反響して、明かりを向けた先の室名札には『理科室』と書かれていた。
入室していく彼らに続いて中を覗いた俺は、入り口のすぐ傍に人体模型が置かれていたことに驚く。それと同時に、西村が悲鳴を上げた理由も理解できた。
(これは西村じゃなくてもビビる)
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