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最近、身体が軽くなった。
同僚に、近づくと匂いがすると言われる。自分でも感じる。あの飲み物の香りがする。
甘くて、いい匂いがする。朝と晩に風呂に入っても消えない。
自分から漏れ出る匂いで、周囲にあの缶飲料の魅力が知られてしまうように感じて、気持ちが落ち着かない。
どうしたの、と訊かれる。香水でもつけてるの、と微笑まれる。
調子はいいよとだけ、答えておく。
時間を作ってはあの自動販売機を探して回った。同じ飲料缶を売っている店や自動販売機があればと願い、探し回った。
夜中に捜索して睡眠を減らしているせいか、昼間でも夢を見る。起きているのに、夢だと思う。淡い霞のなかを泳いでいるような気分になる。
短い時間だが記憶が飛ぶことがある。
風呂に入ると、気を失うように寝てしまう。
体感する幻覚に襲われる。身体が水に浮くと、全身が溶けて、脳も内臓も混ざり合ってしまう感覚に襲われる。
気が緩むというのか、内側からなにかが這い出て蠢いている感じがする。そんなとき、細胞が揺れ、水面が揺れ、激しく波紋を作る。
そんなことはありえないから、やっぱり夢だ。
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