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私は一睡もせずに、朝を迎えてしまいました。
気が付くと希世さんが訪ねて来られる時間で、お勝手の戸が開く音で身体を起こしました。
部屋を出て、居間に出ると、希世さんが外套を壁に掛けておられる所でした。
「あら、要さん。おはようございます」
私は希世さんに挨拶をして、消え掛けた火鉢に練炭を入れます。
ふと、顔を上げて、応接間を見ると、昨夜酔ってしまい泊っておられた律さんの姿が見えました。
倉持律さん。
建具師で私と先生の書斎の建具を作って下さる予定になっています。
私が、応接間の律さんに声を掛けに行こうとしますと、希世さんが私の肩に手を添えられました。
「私が行って参りますので…」
希世さんの手には手拭を持っておられます。
こういった事は女性にお任せした方が良いのでしょう。
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