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「だから今回は許してあげる。でも二度目はないからね」
最後の「ね」の部分に凄みをきかせ、念を押される。
運よく許してもらえたことに心底ほっとして、僕は泣きだしそうになってしまう。亜由美は「大袈裟ねぇ」と笑いながら、僕の作ったプリンもどきを手に取った。
「あっ、おいしくないよ!」
そう止めるのを無視して、迷いなく一口食べる。
「うわ、謙遜かと思ったけど本当にまずい」
真面目な表情で放たれた容赦のない一言。だけど、事実なのだからしょうがない。そして、改めて思い知る。僕は彼女のこういう率直なところが大好きなのだと。
「でも、悪くなかったよ」
意味わかるよね? というようにニヤリと微笑む亜由美。僕もつられておかしくなり、強張っていた頬がほころぶ。彼女への愛しさがますます募って、僕の胸はこれ以上ないくらい幸せな気持ちでいっぱいになった。
今の気持ちを言葉にするなら──何かに譬えるとしたら、これしかない。
その甘さと蕩け具合たるや、まさにプレミアムプリンのごとし。
【おしまい】
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