エマージェンシー・プリン

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何とか普通の呼吸ができるようになり、深く一息つく。だが決して安心したわけじゃない。その時点でラーメンは半分弱残っていたが、腕時計で確認した時刻が12:38だという事実が突き付けられるや否や、僕は田中に一言の断りもなく店を飛び出した。 お前はバカか!? いや、ハッキリとしたバカだ! 救いようのないバカだ! 全速力で駆けながら、今の今まで失念していた己を完膚なきまでに愚弄する。 そもそもの始まりは三日前の夜。 妻の亜由美が急な代役で北海道へ出張することになり、慌ただしく準備していた時にまでさかのぼる。 「二泊三日だから、あなたの食事はテキトーにどうにかしてね。でも殿のごはんは忘れたり、あげすぎたりしちゃだめよ。ちゃんと計量して」 我が家は僕、妻、殿という名の小型犬の三人暮らしだ。亜由美のこういう言動から我が家のカースト順位が良くわかる。いわずもがな僕は最下層だ。 「ああ、うん。わかったよ。殿といい子でお留守番してる」 まぁ、そんなことは脊髄反射的な出まかせであるが、急な出張でピリピリしている亜由美のご機嫌を損ねたくはない。結構大きな商談で大変だなぁと同情する半面、彼女がいない間はなんでも好きなものが食べられるんだ! とワクワクしてくる。
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