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「真白さん」
放課後、帰り道を一人歩いていたら後ろから声を掛けられた。
この声。聞き間違えるはずがない。
私は振り返る。
そこに立っていたのは、やっぱり羽田君だった。
いつも通りのクールな顔で。彼は立っていた。
私は突然のことに動悸を抑えるだけでいっぱいいっぱいなのに。
なにか落とし物でもしただろうか。理由でもなければ羽田君が私に話し掛けてくれるようなことなんか絶対ない。
「話したいことがあるんだけど、今、いいかな」
「……え。う、うん。大丈夫だけど」
緊張しすぎてうまく答えられないのがもどかしい。
羽田君は私をじっと見ている。
なんだろう。やっぱり落とし物かな。それとも、制服のスカートがめくれてるとか。
不安になって後ろを確認する。……大丈夫だ。
「あのさ……」
羽田君が言う。
それから、周りをきょろきょろと確認するように見る。
私もつられてそうする。周りに人はいない。
そうして再び羽田君の方へ向き直ると、羽田君は意を決したように言った。
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