チルチルの矜持、ミチルの憂鬱

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 ――俺は、何かを成し遂げる人間だ。その何かはまだ見つかっていないだけで、きっと必ずあるはずだ。    何の根拠があるわけでもないけれど、昔から俺はずっとそう思っていた。  成績がべらぼうによかったわけでもない。特段に運動が得意だったわけでもない。  性格は、十人並みかもうちょっと下、だが法律は犯さないと決めているし、一年に一度くらいは募金をすることがある。  そして見た目は上の下くらいだと言っておこう。  どこにでもいそうな人間であることは自覚している。  それでも俺は、いつか何かを成し遂げることができる、特別な人間だと思い続けてきた。  では俺の一体何が特別なのか。  二十六歳になった今でも、俺はずっと探し続けている。  自分では気づかない何かはないかと、友人や家族に聞いてみたりもした。  すると返ってくる答えは、たいがいこうだ。
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