終章

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 誠はふらふらとよろめきながら、雅近の邸に帰り着く。 「お帰り……って、どうしたんだい!? 怪我してるじゃないか」 「少し、杖罰を受けまして」 「何があった!?」  妙と会話しているのを、途中から見られていたらしい。あの後、罪人と馴れ合うなとお咎めを受け、杖で打たれたのだ。  しかし、そのようなことは話さない。 「大丈夫ですから」  それだけ言う。  雅近は誠をいそいそと座敷に導き、手当してくれる。  主従の枠を超えた奇妙な光景。 「とうさま、いたいの?」  その中に真白も入ってきて、健気に手伝い始めた。  これも、やがて日常になっていくのだろう。そんな些細なことが、誠にはたまらなく嬉しい。  痣はじくじく痛むが、心は軽い。  数年来の古傷が、ようやく一つ塞がった気がする。  主従は、仮初め。親子に至っては、偽物。それでも、互いを想う気持ちだけは紛れもない本物だ。 「篤良様、頼安。私は、こんなに幸せで良いのでしょうか」  心の中で、かつての主人と同僚に問いかける。応えはもちろん無いが、二人なら笑って頷いてくれるだろう。  過去は変えられない。失ったものは戻らない。それでも、新たに大切なものを見つけ、それを守ることはできる。  幸せは、取り戻すのではなく、新たに手に入れるものなのだ。  生きていこう、これからも。
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