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「じゃあ、またね」
「うん、また」
僕らは二つしかない教室の前で別れの挨拶をすると、それぞれの教室へと入っていった。機会がなければ話すことが出来なくなってしまったこの関係が、僕はとてももどかしかった。
放課後になり教室を出ると、菜乃香が誰かと話をしていた。気になり少し近づいてみると、それは隣のクラスの忠志君だった。たしか、菜乃香とは一緒に学級委員をしていたはずだ。僕以外の男子にもあんな表情を見せるのだなと僕は少し悔しくなった。
その日の夕方、僕が帰路につくと後ろから「おーい」という菜乃香の声が聞こえてきた。
「今帰り?」
「うん!春陽も?」
「そうだよ」
僕は忠志君と仲良いの?なんてことを聞きたかったが、その答えを聞くのがなんとなく怖くて、くだらない世間話をしながら家へと帰った。
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