SS

3/5
328人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
大也が私の腰にそっと手を回すと、ヒューヒューという、声が上がる。 声の主は、さっきまでステージの上で素敵な歌声を披露してくれていたBIIのボーカル、カケルさんだ! 改めてみると、 カケルさんだけじゃなく、 メンバーの卓さんも木之下さんも、 押田さんまでいる。 恥ずかしいけど嬉しくて、大也に寄り添うと 「嫁になる芽衣です。苛めないであげて」 と、大也がちゃんと紹介してくれる。 「大也おめでとうー」 みんなからの拍手が降り注いで、 大きなケーキを持ったスタッフさんがやってきた。 ケーキには 『祝結婚』 と書かれている。 「簡易的で悪いけど、今ならみんないるし、結婚式とかまだ決めてないし、一応紹介しとこうかって」 ちょちょっと待ってよ。 今、散々ライブで泣いたから、メイクなんてもうしてないようなもので、髪だって、何もかも、私、酷い状態なのに。 これが、大也の嫁だなんて思われたら、 大也の株が下がってしまう。 「大也、本当にいいの?こんな私で」 「ここまできて、何言ってんの? 芽衣がいいって言ってんじゃん」 大也は私に耳打ちする。 いや、そういう意味でもないんだけど……。 でも、 やだ、 嬉しい……。 みんなから注がれる温かい視線に涙がジワリと湧いてくる。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!