十年越しの告白

6/11
前へ
/11ページ
次へ
 この日、加藤は家に帰るとすぐに私服に着替えた。  「あれ?あんたどっか行くの?」  昼間からお酒を飲んでいる母の、波打った声が玄関まで聞こえてくる。  「ちょっと図書館!」  加藤がそう返答すると、母はリビングから千鳥足でこちらに向かって来た。  「あんたは、私と違って真面目ね〜」  母の言葉に加藤は「」と言葉を返した。  その時の加藤のどこか不気味な笑顔に、母の酔いはすっかり覚めていた。母が「いってらっしゃい」という頃には、ドアの閉まる音が家に響いていた。  加藤は図書館に向かう途中、小さなカフェに立ち寄った。ドアの前に置いてあるメニュー表をしばらく眺めた後、店内に入った。  「コーヒーと、たまごサンド一つ」  「お持ち帰りですか?」  「はい」    この時間のカフェは学生や主婦の方が多く、少し賑やかだった。  「あれ、加藤?」  加藤は声の聞こえる方に目をやると、そこには堀田の姿があった。    「堀田、今日バイト入ってたんだ」  「うん、なんかお前俺がいる時いつも来ない?」  「んなことないよ、行きつけだから、このカフェ」  「金持ちだなぁ、どんな頻度で来てるんだよ。じゃ、俺戻るから。またな」  「おう!またな」  加藤は堀田に別れを告げると、商品を受け取り図書館へと向かった。自習室に入ると三時間のタイマーをセットして課題に取り掛かった。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加