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この日、加藤は家に帰るとすぐに私服に着替えた。
「あれ?あんたどっか行くの?」
昼間からお酒を飲んでいる母の、波打った声が玄関まで聞こえてくる。
「ちょっと図書館!」
加藤がそう返答すると、母はリビングから千鳥足でこちらに向かって来た。
「あんたは、私と違って真面目ね〜」
母の言葉に加藤は「ちゃんと、お母さんの息子だよ」と言葉を返した。
その時の加藤のどこか不気味な笑顔に、母の酔いはすっかり覚めていた。母が「いってらっしゃい」という頃には、ドアの閉まる音が家に響いていた。
加藤は図書館に向かう途中、小さなカフェに立ち寄った。ドアの前に置いてあるメニュー表をしばらく眺めた後、店内に入った。
「コーヒーと、たまごサンド一つ」
「お持ち帰りですか?」
「はい」
この時間のカフェは学生や主婦の方が多く、少し賑やかだった。
「あれ、加藤?」
加藤は声の聞こえる方に目をやると、そこには堀田の姿があった。
「堀田、今日バイト入ってたんだ」
「うん、なんかお前俺がいる時いつも来ない?」
「んなことないよ、行きつけだから、このカフェ」
「金持ちだなぁ、どんな頻度で来てるんだよ。じゃ、俺戻るから。またな」
「おう!またな」
加藤は堀田に別れを告げると、商品を受け取り図書館へと向かった。自習室に入ると三時間のタイマーをセットして課題に取り掛かった。
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